前回は旧住友赤平炭鉱立坑の内部を紹介しました。
今回は旧住友赤平炭鉱坑口浴場と旧北炭赤間炭鉱の遺構です。
かつて炭鉱の町として近代日本を支えた赤平市。町には今も多くの炭鉱遺産が保存されています。中でも赤平のシンボル的存在となっている旧住友赤平炭鉱立坑櫓を紹介します。
坑口浴場
立坑櫓の向かいには、炭鉱で働く人たちのための浴場がありました。
立坑とは地下でつながっていて、汗と炭塵で真っ黒になった鉱員たちは、ここで疲れを癒やしたそうです。
炭鉱が閉山となった現在は立入禁止となってますが、立坑同様、イベント等で公開されることがあります。
入るとすぐに鏡があります。
鏡に貼ってあるのは「そらち炭鉱の記憶アートプロジェクト」のお知らせ。
2017年は赤平で開催です。
坑口浴場も会場として使用されるようです。
最近関係者以外の浴場利用が増えているそうです。気を付けましょう。
配電盤でしょうか。
この広い空間が更衣室。
天井からぶら下がっているのは衣類を入れるカゴです。
「吊籠方式」といって、この中に衣類をかけ、天井に固定します。
そうすることにより、下の空間を広く使え、掃除がしやすく、また濡れた衣類やタオルが乾きやすいというメリットがあります。
吊り上げたあと、ここに固定して個別で鍵をかけていたようです。
カゴの中のヘルメット。
壁のひび割れや染みが良い感じです。
こちらの広い空間は何に使われていたのでしょう?
最盛期には5,000人もの人が働いていたそうなので、当時はかなり賑わっていたのではないでしょうか。
ここが浴室。
赤平炭鉱の坑口浴場には大小合わせて5つの浴室があります。
見学できるのはそのうち3つでした。
お湯が出ていたあとが残っています。
この壁の向こうにも同様の浴場があります。
この向こう側も浴場です。
照明とごみ箱。
隣の浴室。
こちらは真っ暗で、浴槽の中は瓦礫でいっぱいでした。
奥の壁には穴が空いていて、別の部屋へつながっていました。
穴の断面を見るに、もともとは壁だったようです。
なぜこんな大穴が開けられたのでしょうか。謎です。
内部はかなり狭い空間。
何に使われていた部屋なんでしょう。
壁の穴の向こうに見える隣の浴室の窓。
窓にはなぜかカラーのガラス。
こちらは少し離れたところにある小さい浴室。
洗面器。なぜかハート型。
注意書き。
「浴槽のフチに石鹸及び石鹸の付いたタオル等は置かない様」
ライオンホワイトクレンザー。
選炭工場跡とズリ山階段
立坑と坑口浴場から1kmほどのところに北炭赤間炭鉱の選炭工場跡とズリ山があります。
赤間炭鉱は1938年(昭和13年)に開鉱、1973年(昭和48年)に閉山されました。
最盛期には1700人以上が働いていたそうです。
選炭工場では採掘された石炭から不純物を取り除き、品質別に選別する作業が行われていました。
残っている建物は原炭ポケットの一部で、ここでは採掘した石炭が一時的に保管されていました。
登りたくなる感じですが、立入禁止です。
原炭ポケットの向こうに赤平炭鉱の立坑櫓が見えています。
原炭ポケットから少し奥に行くとズリ山階段の入り口があります。
ズリ山とは、採掘によって出た岩石などが積み重なってできた山。
このズリ山には777段の階段が設置されており、頂上まで登ることができます。
ズリ山階段としては日本一のスケールだそうです。
ちなみに熊出没注意です。
左の柵の向こうの杭に、親切にも現在の段数が記されています。
距離的には大したことはないのですが、序盤は数字がなかなか進まなくてちょっと心が折れそうになります。
3分の2くらい登ると視界が開けます。
杭に記された数字も後半戦になるので、ちょっとやる気が回復。
最後の段です。
ようやく頂上。
時間は15分程度でしょうか。
ひたすら階段なので、短時間でも結構疲れます。
頂上は草木に阻まれ意外と景色が良くない(笑)
遠くの景色はほぼここしか見えません。
頂上から少し下ると、立坑櫓等いろいろ見えます。
頂上には2基の望遠鏡。
こちらの望遠鏡は目の前の木しか見えません。
もうひとつはちゃんと見えます。
覗くとこんな感じ。
手前の大きな建物は赤平駅。
「赤平市交流センターみらい」と合築です。
遠くには「德川城」が見えます。
道民にはわりと有名な物件です。
もともとは人形会社が築城したものですが、現在は主不在の廃城です。
売り物件かどうかはわかりませんが、一国一城の主を目指している方、いかがでしょうか。
おわりに
北海道には日本の近代化を支えた炭鉱の施設がまだまだたくさん残されています。
空知地方は特に多く、保存や活用も進んでいます。
ガイドツアーを始め、地域の方々の協力のおかげで見学できる機会も多いです。
ただ、保存が進められているとはいえ、老朽化も進んでいるのでいつまで見られるかわかりません。
気になる方はお早めに行ってみてください。
※記事内の写真はTANtanまつり2017での公開の際に撮影したものです。