9月6日未明に起きた北海道胆振東部地震と大停電で北海道ほぼ全域が被災するという前代未聞の災害に驚いた方も多いと思います。
私が住む小樽市では、地震の被害こそほとんどなかったものの、他の地域と同様、約2日間停電していました。
今回は停電で役に立ったものやわかったことをまとめてみました。後半では今回の地震と停電で出回ったデマについてまとめてあります。
停電で役に立ったもの・あればよかったもの
電池式の照明器具
これはあればあるほど良いです。
照明がないと日没後何もできません。寝るだけです。
我が家には20年以上前に買ったキャンプ用のランタンの他、懐中電灯、読書用ランプ等いくつかの照明器具がありました。
キャンプ用のランタンは15年くらいろくに使っていないにもかかわらず、ちゃんと点灯しました。昔のものは丈夫です。
また、キャンドル的なものもたくさんあって助かりました。
小樽市では冬に「雪あかりの路」というイベントがあるため、燃焼時間の長いキャンドルを備蓄している家庭も多かったと思います。
充電式の電池
停電後、真っ先に店頭からなくなったもののひとつが電池です。
停電になるとそもそも充電できないので、日ごろから数本充電しておくとよいです。
切れても自治体等の充電サービスで充電すれば何度でも使えます。
今回の停電では、読書用ランプを使用するのに役立ちました。
電池式ラジオ・手回し式ラジオ
20年以上前に買ったaiwaのラジオが役立ちました。
前述のランタンといい、昔のものは本当に丈夫です。
また、我が家にはないのですが、手回し式のラジオがあると安心ですね。
ノートパソコン
モバイルバッテリーとして役に立ちました。
後述しますが、通常のモバイルバッテリーが役に立たなかったため、サブ機で使っているMacbook Airからスマホを充電しました。
約15%分でiPhone7のバッテリー7割(30%→100%)を充電できました。
フル充電されていれば、通常のモバイルバッテリーよりもかなり多く充電できます。
ただ、運の悪いことに、前夜に雷が多発していたせいで、メインPCの使用を避けサブ機を電源につながずに作業していたために、バッテリーの残りが20%しかありませんでした…
翌日、海上保安庁の特設テントでフル充電させていただき本当に助かりました。
通常のモバイルバッテリーよりも短時間で多くの電力を充電できるというメリットもあります。
カセットコンロ
実際には使わなかったのですが、ガスが使えなくなったときに必要です。
また、オール電化の住宅では停電になった時点でかなり詰むので必須だと思います。
冬場だと火を使えるかどうかが生死につながりかねないので、用意しておいた方が良いでしょう。
ポータブル電源
アウトドア用のバッテリー。これは”あれば良かった”の方。
アウトドア趣味のある人なら持っているかもしれません。
これがあるだけで、いろいろなことが解決します。
本格的な発電機を持っているとなお良いですが、値段が高い上に今回の停電では一酸化炭素中毒による死者も出ています。
一般家庭にはちょっとハードルが高いので、ポータブル電源がちょうど良いと思います。
電源不要のストーブ
ツイッターのフォロワーさんからご指摘いただき追加。
北海道の防災的には最重要アイテムと言っても過言ではありません。
今回は幸い暖かい日だったので大丈夫でしたが、9月でも寒いときは本当に寒いですからね。
上の写真の製品は電源・電池の両方が使えるタイプのようです。
家の暖房の1台はこういうタイプにしておくとイザというときに困りませんね。
トランプ・ボードゲーム
停電になると、娯楽が極端に減ります。特に夜。
テレビもスマホもパソコンもゲームもない。みんなで本を読めるほどの照明もない。
そんな中役に立つのがトランプやボードゲーム。
ラジオを聴いていると、トランプやボードゲームで盛り上がったという人がちらほらいました。
電気を使用せず大人数で楽しめる娯楽をいくつか用意しておくと、いざというとき気が滅入らなくて良いです。
停電時には情報源が本当に少なくなります。
そんな中、ツイッターの情報の中には役に立つものがたくさんありました。
停電が復旧している地域の把握、断水が起きている地域の把握、お店の混雑具合や商品の状況、充電サービスを受けられる場所…
ラジオで得られる情報もありましたが、たとえば個人で経営している喫茶店で充電させてもらえるといった情報はツイッターならではでした。
ただし悪い面もかなり目立ちました。そちらは後述します。
役に立たなかったもの
在庫品のモバイルバッテリー
当たり前ですが、あらかじめ充電したものがないと役に立ちません。
普段それほどスマホを使う方ではないので所有していなかったですが、停電を受けて慌てて買いに行きました。
イオンの電気小物のコーナーで買ったのですが、長期間売れ残っていたらしく、いざ繋いでみると残量ゼロ。まったく意味ありませんでした。
もちろん、モバイルバッテリー自体はとても役に立つのですが、店頭の在庫には期待しない方が良さそうです。
仏壇用のろうそく
長いので安定感がなく地震のときには危ないです。
我が家でも最初仏壇用のろうそくを試したのですが、危ないのですぐにやめました。
ろうそくを使うときは、太くて短い、いわゆるキャンドル的なやつを使いましょう。
SNS
・Twitter
役に立つ情報もあるが、ノイズも多い。
後述しますが、誤情報・デマの拡散がとても目立ちました。
SNSには、残念なことに正しい情報よりもデマの方が拡散しやすいという性質があります。
これは完全に使う側の問題なのですが、災害時には特に目立ちます。
また、「最近のハイライト」「〇〇さんがいいねしました」は情報収集の妨げ以外の何ものでもないのでさっさと滅んでほしいです。
バッテリー残量が厳しい中必死で情報収集しているのにこれが出てきたらもう。
今までユーザーからさんざん不評を買っているのにこの機能を残している意味がわからない。意味が分からない。せめて設定でオフにできるようにするべき。
あと、動画広告。省電力モードにしているときには動画広告を表示しないとかできないのだろうか。
追記:9月18日に「最近のハイライト」「〇〇さんがいいねしました」を非表示にできるよう改善されました。
・Facebook
重すぎる。
わかったこと
- 水とガスが使えれば割となんとかなる。冬だと死ぬ。
- 冷蔵庫冷凍庫は開けなければ意外と持つが、開けないと食糧がないので結局開ける。
- 冷凍食品や生鮮食品を積極的に消費するため、食事が意外と豪華。
今回の停電では「道民がこぞってバーベキューしてる」といった情報が話題になっていました。
我が家では肉の備蓄はあまりなかったのですが、冷凍食品がたくさんあったので「ハンバーグとエビフライ」といった小学生の誕生日みたいな食事が続きました。
ただし、食料に困らないのはぜいぜい1週間程度。その後は急激な食糧難になったと思われます。
また備蓄の少ない家庭では最初から食糧の確保に苦労していたようです。 - 本当にデマが出回る。
他の地域の災害でもデマは問題になっていましたが、今回も出回っていました。これについては後述します。 - 電波が微弱だとスマホのバッテリーがガンガン減る。
地震直後は普通に使えていたスマホも6日午後には電波が微弱に。
この状態で使用しているとバッテリーがガンガン減ります。
機内モードにするか、どうせ使えないので電源をオフにしましょう。 - 日没=活動時間の終了。
照明がもったいないので8時くらいに寝てました。 - アウトドア趣味があると強い。
ランタンにしろポータブル電源にしろ、アウトドア趣味があるといろいろ助かります。 - 信号が消えていると怖い。
大きい交差点では警察官が交通整理をしていましたが、警察官のいない交差点の方がずっと多いです。
こんな状況でも安全運転を心掛けないドライバーもいます。徐行どころか減速もせず交差点を突っ切る車がいたり。
私も1件事故を目撃しました。なぜそんなところでひっくり返っているのか。
- 星がヤバい。
停電直後に外に出てみると気持ち悪いくらいの星空が広がっていました。半径200km~300km以上ほぼ暗闇なんて、おそらく日本の陸地では体験できないと思います。写真は1日目の夜。一部で電力が復旧していたので停電直後に比べると少し明るかったですが、それでもすごい星でした。 pic.twitter.com/DEA2pdJ1g9
— 小樽総合デザイン事務局 (@otarunet1) 2018年9月8日
- 停電だけなら子供たちは意外と元気。
近所の子供たちはむしろいつも以上に生き生きしてました。 - アイドル強い。
地元のFMの音楽のリクエストでアイドルの曲が目立ちました。
アイドルの曲は明るく前向きなものが多いし、ファンにとっては生きる活力なのだなあと思いました。 - 冬だと死ぬ。
誤情報・デマの拡散について
断水の誤情報
午前3時過ぎの停電の後、朝には誤情報が拡散し始めていました。
情報が錯綜してますね。噂レベルの話で慌てないようにしたいですね。
— 小樽総合デザイン事務局 (@otarunet1) 2018年9月6日
これは「間もなく断水になる」という情報がツイッターで広まっているのを受けて書いたツイート。
小樽市では一部の地区のみで断水が発生しており、他の地区では問題なく水道が使える状況でした。
ツイッターで調べてみた(9/6 03:10~9/6 09:10 の範囲で「小樽 断水」で検索)ところ、8時半ころから断水の噂が広まり始め、9時前には具体的に「10時半に断水」という形での拡散が始まったようです。
情報源を探してみましたが、はっきりとしたことはわからず。
ただ、「〇〇の職員から聞いた話だけど」といった感じの情報はいくつかありました。(発言者の特定を避けるためツイートは引用しません)
他の地域でも同時期に断水の誤情報が流れています。(同条件で地名をそれぞれ変更して検索)
震源に近い苫小牧市では午前7時ころには「11時から断水」という噂が流れ始めていました。
札幌でも午前7時には「6時間後に断水」という情報が現れて、8時過ぎあたりから拡散が始まったようです。
いずれも具体的なソースは見当たらず、「知人が言っていた」「水道局の職員から聞いたって知人が言っていた」といったレベルの情報が元になっているようでした。
地震雲が出てる・地鳴りが聞こえる・本震が来る
9月7日~8日にかけて「苫小牧や厚真や札幌清田平岡で地鳴り」「地震雲が出てる」「5~6時間後に本震が来る」といった誤情報が拡散され、各自治体に問い合わせが相次いだようです。
そもそも「地震雲」は存在しないし、揺れより先に地鳴り(音)だけが来ることはありませんし、本震が来る時間が予測できたら苦労しません。
※地震の前に地鳴りを感じるという人もいますが、初期微動を音として捉えているか、あるいはただの気のせいです。
こちらもツイッターで情報源を探してみました。(9/6 03:10~9/8 18:10 の範囲で「地鳴り 本震」で検索)
今回の地震に関連する地鳴りの書き込みが確認できたのは9月7日午前11頃。
ツイートした本人が体験したわけではなく「苫小牧で地鳴りが起きているらしい」といった情報。
その後午後9時過ぎから「苫小牧で地鳴りが聞こえるらしい」「本震が来るらしい」といった書き込みが増え始めています。
断水の誤情報もそうですが、最初は「らしい」で始まった情報が、次第に断定に変わり具体的な時間まで付加されて「デマ」として拡散していますね。
また、デマとは別に、自らの体験として「地鳴りが頻発している」とツイートしている人も多くみられましたが、文脈から察するに、余震を地鳴りとして捉えているようでした。
誤情報・デマに惑わされないためには?
まず一番重要なのが「〇〇から聞いた話」「〇〇らしい」という情報は疑うこと。
市町村・電力会社・水道局・自衛隊といった公的な機関が正式に発表していない情報はほぼ100%デマだと思った方が良いです。
公的な機関が正式に発表した情報ではないものは拡散しないようにしましょう。たとえ親切心だったとしても、拡散してしまうことでデマの片棒を担いだことになりかねません。
次に、正しい知識を持つこと。
今回の”地鳴りと本震”については、地震についての正しい知識を少しでも持っていればデマだとわかります。
まず地震には初期微動(P波)と主要動(S波)があります。
先にグラグラっときて、数秒後にドカンと来るあれです。中学理科で習うと思います。
緊急地震速報はこのP波とS波の時間差を利用しています。
速度はそれぞれ、P波5〜7km/秒、S波3〜4km/秒と音速(空気中)よりもずっと速いです。
即ち、揺れよりも先に地鳴り(音)が観測されることはありません。
地鳴りがしているということはすでに揺れているということです。
これらのことを知っていると「地鳴りの数時間後に本震が来る」が誤りであることがすぐにわかります。(「小さい揺れのすぐ後に大きい揺れが来る」なら間違いではありません)
また「地震の前に地鳴りを感じる」という人についても、初期微動を音として感じているか単なる気のせいであることもわかります。
「5~6時間後に本震が来る」に至っては知識以前の問題だと思います。地震を数時間前に予知できたら大ニュースですよ。
最後に、不確かな情報を不用意に書き込まないこと。
災害時にはSNSは重要な情報源になります。
そこに伝聞や憶測を書き込むことで、自分自身がデマの発生源になる可能性があります。
そうなると、情報を混乱させるだけでなく、後からデマの発生源として大バッシングされるかもしれません。
生活や命にかかわるような情報を書き込む際には、しっかりとした根拠があるか今一度確認していただきたいです。
デマと備えについて
今回の断水の誤情報拡散に際し、我が家では取り急ぎ水を確保しました。
情報は胡散臭いとはいえ、備えるに越したことはないからです。
こういう状況下では断水になる可能性も十分考えられました。(だからこそ誤情報が拡散したのですが)
地鳴りと本震のデマの際も、必要最低限の家財道具や防災グッズ一式を安全な場所に避難させた人も多かったと思います。
これは決して悪いことではありません。熊本地震の時のように、数日後に本震が来ることもあります。
こういった啓発的な意味では、今回のデマもまったく無意味ではなかったと思いますが…
しかし、デマが流れることで問い合わせが殺到し、支援や対策に支障をきたすこともあります。
今回の地鳴り本震デマの際も自治体等に問い合わせが殺到したようですし。
また「危険動物が逃げた」「外国人窃盗団が現地入りした」的な悪質なデマが流布されるケースもあります。
防災・防犯は大事ですが、たとえこういった情報が流れてきても、「真偽を確かめる」「警戒はするが自分は拡散しない」という冷静さを持つことが大切です。
おわりに
経験したことのない大停電で大変な思いをした方も大勢いると思います。
不幸中の幸いか、8日にはほとんどの地域で復旧したようですが、これが長期化したら、もし冬だったらと思うとゾッとしますよね。
また、今回の記事で何度も書いていますが、デマがひどいです。
情報があふれる時代なので、情報の見極め方を学校で教えるべきだし、企業でも研修としてやった方が良いのではないかと思います。
そもそも科学的なリテラシーが低すぎる(特に大人)ところに問題があって、これは教育云々の前に学問や研究や論理を軽視する日本の社会の問題だと思うのですが、これを言うと長くなるしこのサイトの趣旨と完全にかけ離れてしまうのでここでは書きません。
とりあえずみんな『Dr.STONE』を読むべき。